コラム

女性と自閉症-自閉症論は「性差別」するか?

 かつてわたしは、『自閉症論資料集の試み』と題して、自閉症概念の草創期に、その着想を発表したハンス・アスペルガーとレオ・カナーの論考を翻訳しました。

 そこでは、いまでもまだ流布していそうな、「自閉症は男児に偏って発症する」という固定的な考えの元になった「事実」を提供しています。事実として男児に偏った記述があるため、「自閉症は男児に偏っている」と断言できそうです。実際、自閉症の「超男性脳」理論が唱えられ、自閉症は極端に男性的な脳で、女性の自閉症者も、そのような脳を持っていると。

 しかし、診断は処方と同じく医師ができる特権であり、診察をする診察室なり、心理テストの受検をする場に来ないことには、自閉症という語がまだまだ知られなかった頃には特に、疑われることもなかったかも知れません。

 また、男性医師が女児を診て、自閉的に「違う」という予感を抱くには、「標準的な女性」なるものを知っている必要がありそうですが、果たして当時のオーストリアやアメリカで、どれだけそのような視点が持たれるか、あるいは、女性医師が存在したことでしょうか?

 しかし、わたしの支援の現場などで、ASD(自閉スペクトラム症)などと診断される女性とお会いする機会も頻々とあるため、比率的におかしくないか?と考えはじめたのが、たしかもう何年も前です。「女性らしい」社会規範へのアンビバレントな感情を抱きながらとりあえず従っておく態度からは、なかなかこれまでは発覚する機会が少なかったのではないかと考えられます。

 また、先ほどの「超男性脳」理論から感じた矛盾は、女性の自閉症者がなぜ男性を迂回して自閉症となるのか?という点です。それならば、なぜ男児のみに自閉症が発現するのでなく、なぜ女児にも自閉は現れるのか・・・と。

 わたしたちは、自閉症なる発達障害を、脳機能によって健常状態から区別するだけでなく、まずは、男性・女性をはじめとした固定概念を学んでいる段階から、打ち壊しに出る必要があるのではないでしょうか?

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